販売管理の基礎知識

販売管理とは?目的や業務フロー、システムの導入メリットなどを解説

販売管理とは?目的や業務フロー、システムの導入メリットなどを解説

販売管理とは、販売活動に関わる商品とお金の流れを管理することを指します。商品を販売するまでの業務にかかわる一連の流れを適切に管理することで業務効率化や利益向上につながります。

販売管理の対象となる業務は、受注・出荷・請求・仕入・在庫と多岐に渡るため、管理するべきデータや関係する部署も多く、業務は煩雑になりがちです。紙やExcelで管理も可能ですが、販売管理を正確に行うためには販売管理システムの導入がおすすめです。

本記事では、販売管理を行う目的や業務の流れ、販売管理システムを導入するメリットなどについて詳しく解説します。

目次

販売管理とは

販売管理とは、企業活動における「お金」と「モノ」の流れを管理することです。商品の販売状況を5W1H(いつ・どこで・だれに・なにを・いくつ・いくら)で把握します。

さらに販売した商品の代金を「いつ・どのように回収するのか」といった請求情報や、商品の販売履歴・仕入・在庫管理・顧客情報なども管理の対象です。

この「商品」には衣類や食品などの有形商材だけでなく、形のない形のない商品やサービスである無形商材も含まれます。

【無形商材の例】

  • 人材紹介サービス
  • コンサルティングサービス
  • 保険・証券などの金融サービス
  • ソフトウェアなどのITサービス

販売管理を行う目的

販売管理の主な目的は以下の3つです。

販売管理を行う目的

  • 管理業務の効率化
  • 利益向上につながる
  • 顧客満足度向上につながる

管理業務の効率化

販売管理は仕入れから納品・在庫管理など、販売活動における「商品」と「お金」の流れをすべて管理します。

しかし、販売活動の流れを工程や部署ごとに管理してしまうと、情報の伝達ミスが起きたり部署ごとでの理解の齟齬が起きたりするおそれがあります。

販売活動におけるすべての工程を一元管理することで必要な情報を正確に把握でき、改善が進みやすくなるため、管理業務の効率化が計れるでしょう。

業務効率化が進むことでヒューマンエラーの削減や残業時間・人件費の見直しもでき、結果として企業全体のコストダウンにもつながります。

利益向上につながる

販売管理は、販売活動に必要な書類や商品、お金の流れをすべて管理する業務です。適切な販売管理を行えば、企業は収支状況や商品ごとの売上・仕入状況などを把握できます。

たとえば、シーズンごとに販売数が多い商品の在庫・売上状況を分析すれば、時期に応じてコストをかけるべき商品や販売数を減らす商品の判断材料となります。

また、販売活動の一連の流れを把握できるので、それぞれの工程を相対的に評価できます。

販売管理を実施してお金や商品の流れを管理することで無駄な在庫や保管コストを削減でき、利益アップにつながるでしょう。

顧客満足度向上につながる

顧客満足度は商品やサービスが顧客の期待に対して、どれだけ応えられているかをアンケートや口コミ調査などに基づいて算出します。

販売管理によって在庫状況や売上の分析が適切に行われれば、顧客のニーズに応じた販売活動が可能になり顧客満足度向上につながります。

また、顧客とのやりとりをスムーズにすることも顧客満足の向上には重要な要素です。見積書や請求書など、顧客に発行すべき書類を一元管理すれば、書類の提出忘れや遅れを防止できます。

納期や支払期限を遵守することは顧客や仕入先との信頼関係構築にもつながるでしょう。

販売管理の業務フロー

販売管理の業務フローは業種や業態によって多少異なりますが、大きく捉えると以下のような流れになっています。

販売管理の業務フロー

  1. 受注管理
  2. 出荷管理
  3. 請求管理
  4. 仕入管理
  5. 在庫管理

それぞれの管理業務の役割と作業内容について、詳しく解説します。

① 受注管理

受注管理では、見積もり・契約締結・受注について管理します。

見積もり

納品する商品や種類、納期などを記載した見積書を取引先に提示します。見積書の内容が承諾されたら、次の契約締結に移ります。

見積書の内容が受け入れられなかったり、他社と競合し変更を余儀なくされる場合は、見積書の内容を変更しなければなりません。

定期継続案件などで条件が変わらない場合は、2回目以降の見積書作成を省略する場合があります。

【関連記事】
見積書とは?役割や書き方、見積もりの精度を上げるポイントについて解説

契約締結

商品の保証や免責事項など、見積書よりも詳細な内容を記載した契約書を作成し、契約を締結します。初めて取引をする相手の場合は、この段階で顧客情報の登録や管理も行います。

受注

受注伝票の発行や注文請書の送付を行い、契約時に取り決めた内容に問題がないかを再度確認したうえで、受注業務に取りかかります。

【関連記事】
受注とは?受注管理の流れやミスを防ぐ方法を解説

② 出荷管理

出荷管理では、受注情報をもとに「出荷」の手続きと、顧客へ「納品」する手続きについて管理します。

出荷

出荷に必要な書類を作成し、発送の準備を行います。出荷担当者に指示を出し、その指示をもとに出荷担当者が納品物を梱包します。

この段階で、納品時に必要な書類も並行して作成しましょう。

納品

出荷した納品物が、顧客に適切に渡ったことを確認します。受領書に確認印を押してもらい、納品完了です。

③ 請求管理

請求管理では、顧客に請求書を発行(請求)し、実際に入金されるところまでを確認(回収)するまでの管理をします。

請求

顧客ごとに請求額を確定し、請求書を送付します。請求書の発行方法は以下の2つです。

  • 取引ごとに発行する方法
  • 一定期間(1ヶ月ごとなど)の取引の売上代金に対して発行する方法

顧客ごとに取引内容や取引条件、請求締め日などが異なるため、請求書の発行方法は事前に確認しましょう。

回収

入金は、顧客に送付した請求書に基づいて行われます。入金方法には、現金・銀行振込・手形などがありますが、銀行振込による入金が一般的です。

入金されたら、経理担当者は入金額と売上高が一致しているかどうかの確認をして、問題がなければ入金伝票を作成・仕訳を行います。

その際、過去の取引と入金額を照合し、どの取引に対する入金なのかを確認しましょう。この作業を「消込」といいます。

④ 仕入管理

仕入管理では、商品の製造やサービスに必要な資材の調達に関する管理全般を行います。具体的な作業としては、以下の通りです。

  • 見積もり
  • 契約締結
  • 発注
  • 入荷・検収
  • 支払い

見積もり

取引先に見積書の作成・提示を依頼します。内容を確認し、納得できる内容であれば契約締結に進みます。

契約締結

受注管理業務における契約締結と同様に、見積書よりも詳細な事柄を取り決めた契約書を作成し、契約を締結します。

発注

契約した内容に基づき正式に発注を行います。商品名や数量、納期などを記載した注文書を取引先に提出します。

入荷・検収

納品物の種類や数量、状態などに問題がないか確認します。

問題がなければ検収書などを作成し、仕入先に対して検収完了の報告をします。問題があった場合はその旨の報告をし、返品処理などの対応を実施しましょう。

支払い

仕入先から送られてくる請求書をもとに、支払期日までに発注した商品の代金を支払います。その後、出金伝票を作成して消込作業を行います。

⑤ 在庫管理

在庫管理では、適切な在庫状況を維持するために出荷や製造情報に紐付けを行い、在庫数を管理します。具体的な作業には、受払い・実施棚卸・購買依頼などがあります。

受払い

在庫の入出庫を記録し、商品ごとの単価や数量、金額などを管理します。倉庫が複数ある場合は倉庫ごとの入出庫管理、倉庫全体の入出庫管理も必要です。

実地棚卸

在庫管理表などで在庫を管理していても記入漏れや入力ミス、紛失などにより、実際の数量と記録されている数量に差異が生じる場合があります。

このような事態を早期発見するために、定期的に実際の在庫数量を確認し、必要に応じて在庫管理表の情報を修正します。また、差異が生じた場合は、その原因を特定し取り除く作業が必要です。

一連の作業を「実地棚卸」といいます。棚卸とは実際の在庫数量と管理表に記載されている個数が合っているか定期的に確認することを指します。

購買依頼

購買依頼は、必要なものを必要なタイミングで仕入れるための業務です。在庫がなくなる前に購入依頼を実施し、発注します。

【関連記事】
在庫管理とは?必要性や管理方法、在庫管理システムを導入するメリットを解説

販売管理を行う方法

販売管理の方法として挙げられるのは、主に以下の2つです。

  • 販売管理システムを利用する
  • Excelを利用する

それぞれメリット・デメリットをよく理解したうえで企業に合った方法を選択しましょう。

販売管理システムを利用する

販売管理システムとは、部門ごとに分かれている販売にかかわる業務を一元管理し、業務効率化を促進するITツールです。機能はシステムによってさまざまですが、販売管理や購買管理、在庫管理機能などを搭載したツールがあります。

販売管理システムを導入すれば、販売活動の一連の流れをまとめて管理し、より円滑に業務を進められます。また、販売活動に必要な見積書や請求書、納品書などもシステム内で作成・保存が可能となります。

ただし、システムの導入にはコストがかかります。また、企業規模に対してオーバースペックにならないように注意しましょう。

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Excelを利用する

Excelを利用して販売管理を行うことも可能です。ただし、販売管理システムとは違い、データ分析するには関数を用いて管理項目を作成しなければならないため一定の知識が必要です。

販売管理用の無料テンプレートもありますが、自社の用途に合わせるには自身でカスタマイズしなければなりません。また、業務が拡大しデータ数が多くなるとExcelでの分析には限界がくる場合があります。

Excelでの販売管理は無料で利用できるため、コストをかけずに管理したい人や関数の知識があり管理画面を設計できる人におすすめです。

関数の知識がない場合や商品数が多くなり管理が煩雑になったりエクセルでは対応できない可能性が見込まれる場合は、専用の販売管理システムの導入が望ましいでしょう。

販売管理システムを導入するメリット

上述したようにExcelを利用すれば無料で販売管理を行うことができます。しかし、ヒューマンエラーによるミスが起きたり属人化したりするなどのリスクが伴います。

販売管理システムの導入を導入することで、Excelや紙で起こりうるリスクを削減し、適切な販売管理を行うことができます。

ここでは、販売管理システムを導入するメリットについて解説します。

情報を一元管理できる

情報を統合的に管理すれば、複数の部署にまたがる業務であっても、情報の共有漏れなどによる連携ミスの防止につながります。

受注状況などの情報を継続的に蓄積することで、ユーザーニーズの把握に役立ち、経営判断の材料としても活用できるでしょう。

ヒューマンエラーを防止できる

販売管理システムで必要な情報の入力を自動化することで、手作業によって起こりがちだった入力ミスを削減できます。

関数やマクロを含んだExcelで情報を管理すると、担当者しか情報を理解できない(属人化)という問題が発生します。システム化によって入力方法などの作業手順が標準化できれば、属人化を排除でき、担当者不在時などでも柔軟に対応できるという点でもメリットです。

管理コストを削減できる

紙の帳票を使用している場合、紙代や印刷代、保管料などがかかりますが、システム化することでコストを削減できます。

ペーパーレス化も同時に実現でき、適切なシステムを選択すればテレワークやリモートワークにも対応可能です。

販売管理システムを選定するポイント

ここでは、販売管理システムを選定する際の以下5つのポイントを紹介します。

販売管理システムを選定する際のポイント

  • システムの種類(パッケージとオーダーメイド)
  • 運用方法(クラウド型とオンプレミス型)
  • 業種・業態に適しているか
  • サポート体制が整っているか
  • 会社規模に適しているか

システムの種類(パッケージとオーダーメイド)

オーダーメイドのシステムであれば、必要な機能をすべて盛り込み、完全に自社仕様にできます。ただし、システムを最初から構築する必要があるため、導入にかかるコストが高く、導入に至るまでの期間も長いです。

一方、販売管理に必要な機能をパッケージ化したシステムであれば、オーダーメイドのシステムを構築するよりもはるかに低コストで導入できます。また、すでに完成しているシステムなので短期間での導入も可能です。

パッケージシステムに機能追加などのカスタマイズをする場合は、オーダーメイドより高額になったり導入期間が長くなったりと、パッケージシステムのメリットを得られないこともあるため注意が必要です。

そのような事態を避けるためにも、導入前に必要な機能や使い勝手を確認しておきましょう。

運用方法(クラウド型とオンプレミス型)

販売管理システムの運用方法として、次の2種類があります。

  • インターネット経由で利用するクラウド型
  • 自社内にサーバーやネットワークが必要なオンプレミス型

運用方法をどちらにするかについても、システム選びの重要なポイントです。

クラウド型の場合は、導入コストや保守費用を抑えられます。また、インターネットに接続できる環境であればいつでも利用でき、リモートワークにも対応可能です。

ただし、カスタマイズ性はオンプレミス型より低くなる点に注意しなければなりません。

業種・業態に適しているか

販売管理システムに求める機能は業界や業態によって異なるため、業界や業態に適したシステムを選定することが重要です。

業種特有の商習慣やモノの流れが考慮されていないシステムでは、販売・購買情報を一元管理できなかったり、使い勝手が悪かったりする可能性があります。

業種にマッチしたパッケージシステムがない場合は、カスタマイズ可能なシステムやオーダーメイドシステムの導入を検討することが必要です。

結果としてコスト削減や導入後の運用効率化が期待できます。

サポート体制が整っているか

販売管理に携わる人数や部門は、企業規模によって異なります。システムを選ぶ際には、会社の規模に合わせたシステムを選定しましょう。

小規模な企業で特殊な管理を必要としない業種などであれば、パッケージシステムを選択すると導入コストを抑えられます。

検討中のシステムの対象規模や同規模の企業への導入実績の有無も確認するとよいでしょう。

会社規模に適しているか

販売管理システムにエラーが発生したり、システム自体が停止して使えなくなったりする事態の発生もあり得ます。緊急事態において、いかに早くシステムを復旧させられるかが、ビジネスにおいて非常に重要なポイントです。

システムのベンダーがサポートを行っている場合は、問い合わせへの対応体制やエラー発生時のサポート体制が整ったものを選ぶとよいでしょう。

また、OSのバージョンが新しくなった場合は、システムが自動的にアップデートされるかどうかも重要なポイントです。

オーダーメイドシステムを自社で運用する場合は、保守担当者がいつでも復旧にあたれるような体制を整えておく必要があります。

販売管理システムを導入するときの注意点

販売管理システムを導入するときの注意点は、以下の通りです。

販売管理システムを導入するときの注意点

  • 目的を明確化したうえで導入する
  • 複数の販売管理システムを比較する

目的を明確化したうえで導入する

販売管理システムの目的が明確化していない状態で導入しても、効率が悪くなりシステムの恩恵を受けにくくなります。まず、業種や業態、業務の範囲、活用したいデータなどを考慮して目的を明確化させましょう。

また、場合によっては販売管理システムを導入すること自体が目的にすり替わる危険性もあります。何のために販売管理システムを導入するのかを、導入前に熟考することが必要です。

複数の販売管理システムを比較する

導入の目的が明確化したならば、複数の販売管理システムを比較して自社にマッチするか検討しましょう。

最初から1社のみに絞ってしまうと、自社にマッチしているのかの判断基準があいまいです。検討前に、必要な操作性や機能性の基準を決めて比較してください。

無料トライアルを実施している販売管理システムもあるので、実際に利用して比較すると自社業務とマッチしているか判断しやすいでしょう。

まとめ

販売管理は、企業が自社と顧客、仕入先の三者間で行われる「お金」と「モノ」の流れを把握するために必要不可欠な業務です。

適切な管理は企業の収益性を可視化し、業務効率を向上させるだけでなく、顧客満足度向上にもつながります。

よくある質問

販売管理システムは何ができる?

販売管理システムを使えば、販売活動の一連の流れを一元管理できます。代表的な販売管理システムの搭載機能を、以下の表にまとめました。


機能具体的な業務内容
見積管理・見積登録
・見積書作成
受注管理・商品の受注データの登録
・商品の受注・発注
売上管理・リアルタイムの売上把握
・売上伝票や売上明細の出力
・顧客データの収集
請求管理・請求書の発行
入金管理・入金データの自動照会
・入金消込・入金伝票の自動化

システムによっては、在庫管理や購買管理機能を搭載しているものもあります。企業の事業内容によっては販売管理といっても、具体的な内容は違います。販売管理をする際に自社では、どの項目が必要なのかについて検討しましょう。

販売管理と生産管理の違いは?

販売管理とは、販売活動における「商品」と「お金」の流れを管理することです。一方、生産管理とは商品の仕入れと販売の間に発生する製造過程の管理を指します。

販売管理は商品の在庫・売上・仕入れ、お金の請求・入金・支払いなどを管理します。生産管理は、製造の納期・工程・原価などが管理項目です。

販売管理と売上管理の違いは?

売上管理は販売業務の目標管理や売上実績を把握するために「商品」や「サービス」の売上を管理します。

販売管理では1つの商品を仕入れてから納品されるまでのプロセスすべての流れを管理するため、売上伝票の作成や請求、支払いなどの売上管理業務の情報も必要です。つまり、売上管理は販売管理に含まれているといえます。

売上管理に関して詳しく知りたい人は「売上管理とは?目的やエクセル・会計ソフトでの管理方法の違いを解説」をご覧ください。

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